福島亮治 帝京大学外科 上部消化管
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治療(手術・化学療法)

 胃がんの治療には、切除(内視鏡的な切除を含む)、化学療法(抗がん剤療法)、放射線療法などがありますが、悪いところ(がん)を切取ってしまう(切除)外科治療が最も基本的な治療法となります。
ある程度進行したがんでは、手術と化学療法を組み合わせて治療を行うことが多くなっています。粘膜にとどまる小さな早期がんの一部に対しては、手術を行わずに、内視鏡を用いて切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR、ESD)が行われます。放射線療法は、最近米国で手術後によく行われていますが、我が国ではリンパ節をしっかりと手術で取り除いているので、あまり行われていません。
外科治療

 胃がんに対する標準的な手術は、がんができている胃を切除することと、胃がんが転移しやすい胃のまわりのリンパ節を同時に切除すること(リンパ節廓清)です。
胃のどの部分をどの程度切除するかは、がんのできている場所とがんの大きさ、進み具合によって決まります。一般にがんが噴門(胃の入り口)から離れていれば幽門側胃切除が行われます。これは胃がんに対する最も一般的な手術で、胃の出口に近い部分が2/3から4/5程度切除され、噴門側の胃が一部残ります(図1)。一方、がんが噴門(胃の入り口)に近い場合は一般に胃全摘がおこなわれています(図2)。小さい早期のがんに対しては、噴門側切除(図3)を行って幽門部(出口に近い部分)を残すことがありますが、幽門部(胃の出口に近い1/3)を残すことが、手術後の生活でメリットがあるかどうかは、はっきりしていません。
胃の働きは主として食物を貯めておくことです。食物の消化には多少関与しますが、本来、食物を消化したり吸収したりするのは主に小腸です。したがって、胃全摘を受けても通常の日常生活、社会生活に困ることはありません。ただし、幽門側胃切除は、全摘に比べて術後の食事摂取や体重の維持が若干よいようです。
胃の中央部付近にできた早期の胃がんに対しては、通常の幽門側胃切除ではなく、幽門を残した幽門保存胃切除術(PPG)が行われることがあります。リンパ節郭清(リンパ節を切除すること)が一部不十分となりますが、ダンピング症候群(手術後の後遺症のひとつ)や残った胃への胆汁の逆流が少なく、体重が良好に維持されることが多いようです。ただし、手術後の早い時期には、一時的に残った胃からの食物の排出が悪いことがあり、もたれることがあります。

腹腔鏡補助下の胃切除
 お腹に小さい穴を開けてそこから腹腔鏡(専用のカメラ)を挿入してお腹の中を観察しながら手術を行う方法で、通常手術に比べて、創が小さくなるメリットがあります。しかし、リンパ節郭清が難しいことなどから、一部の早期がんに行われていることが多いのが現状です。通常の手術に比べて時間が長くかかり、また合併症の頻度がやや高くなる可能性も指摘されています。2004年版の胃がん治療ガイドラインでは、胃がんの腹腔鏡手術は I 期の胃がんへの臨床研究として行うべき治療として位置づけられています。

内視鏡的切除前と切除後
内視鏡的切除
 早期の胃がんでリンパ節転移の可能性がほとんどゼロのものに対しては、内視鏡下に胃がんを切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術などの治療法があります。胃の内側から病変を削ぎ落とす感覚です。胃を切除しませんので、術後の後遺症はほとんどないといってよいでしょう。しかし、病変を切除したあとに、顕微鏡で確認して(病理組織検査)、切除が不十分な場合は手術で再度胃を切る必要があります。
化学療法(抗がん剤治療)

 手術ができないと判断されたとき、手術でがんが完全には取りきれなかった場合、転移や再発をきたした場合など、多くは抗がん剤治療が選択されます。最近はさまざまな抗がん剤が開発されており、腫瘍縮小効果が高い薬剤も出てきています。しかし、いったん小さくなったがんも、治療を続けているうちにまた大きくなってしまうことがあり(薬の効き目が悪くなる)、抗癌剤の治療だけで完全に治ることはあまり期待できません。抗がん剤治療は、生存期間(寿命)を延ばすことが証明されていますが、副作用も多いので、効果と副作用をよく見極めながら治療をおこなう必要があります。

補助化学療法
 手術で目に見えるがんがすべて取り除かれた場合でも、目に見えないがんが残っていて、あとで育ってくる場合があります。これがいわゆる手術後の再発ということになるのですが、この目に見えないがんをあらかじめ抗がん剤を投与することで治療しようというのが、補助化学療法と呼ばれる方法です。ひょっとするとがんが残っているかもしれないので、抗がん剤を予防的に投与しておこうということです。がんが本当に残っているのかはわからないので、中にはがんがないひとにも抗癌剤を投与している可能性があります。
これまで、補助化学療法が本当に効果があるかどうかの十分な証拠はありませんでした。しかし、今年になってII期とIII期の胃がん手術後にTS-1という抗がん剤を1年間服用すると再発が減るという結果が、我が国の多数の患者さんを対象とした臨床試験で明らかとなりました。

術前化学療法
 手術の前に抗がん剤治療をすることもあります。進んだがんでは、まず抗がん剤で小さくしておいてから手術する方が、より確実に切除できるかもしれないからです。しかし、抗がん剤の効果がない場合は、手術の時期が遅れるとともに、抗がん剤の副作用で体力がおとろえ、手術に悪影響がでることもあります。期待されている治療法ですが、まだ完全に確立した治療とはいえないのが現状です。
抗がん剤治療の実際

 胃がんに対する抗がん剤治療では、(1)5-FU、(2)CDDP(シスプラチン)、(3)タキサン、(4)CPT-11という4種類の系統の薬がよく使われます。(1)の系統の薬には飲み薬もありますが、他は注射薬です。(1)〜(4)の薬を中心、これらを単独、あるいは複数を組み合せた様々な方法が試みられています。最近は、なるべく入院せずに1〜2週に一回、外来で点滴を行うなど、通いで治療が行われることが多くなってきています。
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